工務店の仕事は、オーケストラの指揮者にたとえられることがあります。人と接し、うまくまとめながら家を完成させる仕事は、存外やりがいがあるようで、どの工務店も多かれ少なかれ苦労はつきものです。住宅を受注するのは工務店で、そこから各職方に工事を発注します。だからと言って主従関係をちらかせると、共に地域で生きる、顔の見える産業である住宅建築業では、人間関係がうまくいきません。職方を協力業者と呼ぶのは、みなが対等の関係にあるという意味が込められています。協力業者は、それぞれ専門の技能や知識を最大限に活かして、工務店や他の業者と協力しながら、より良い家づくりにいそしむことが求められます。協力業者と良い関係を築いている工務店は、協力業者の会が組織されていることが多いです。意思の疎通がよくできている集団であれば、工務店の家づくりの理念、あるいはその時々の方針は浸透しているはずですし、建主の要望や住まいに対する考え方なども把握しています。
工事が始まるときに、建主と各職方が顔合わせをして、素晴らしい家を造ることを宣言し、完成時にも、みなでその喜びを分かち合う機会を設ける工務店も増えていますが、お互いの顔が見えていれば、建主の安心感も増すことでしょう。逆に、意思の疎通が図られていない職人集団では、トラブルになる蓋然性が高くなります。