米国の住宅産業やホームビルダー経営の現実を調べてみると、日本の古き良き時代の工務店や大工棟梁の経営や仕事を、そのまま継承しているかのようです。米国の住宅産業は、日本の住宅建設業者がもっとも力を入れている広告宣伝や、モデルルームの建設や、営業担当者の雇用や養成には、ほとんど力を割いていません。その理由は、3つあります。
①住宅市場そのものが熟成し、良質な住宅ストックが充分にあるため、顧客の側に選択権のある買手市場が形成されているからです。日本のように住宅供給者側が広い多様な需要層に網をかけるのではなく、目標とする需要層に対して合目的的な住宅供給をしようとするため、むやみに営業活動をすることはありません。各ホームビルダーは、地域社会において、対象需要者を絞って費用対効果の高い住宅を供給しています。所得階層においても、デザインの嗜好についても、ライフスタイルについても、自社のやるべき仕事を明らかにしているので、消費者の側からしても、自分の要求に応えてくれる業者を選びやすいといえます。ホームビルダーはそれぞれ、他者との相違が区別できる仕事を行い、他社も尊重するような経営をしています。
②ホームビルダーが、自分たちの看板は、過去に建設した住宅や開発した住宅地であり、自分たちの営業担当者は、その住宅を購入したり居住している人であると考えています。そして、住宅販売後も購入者と縁の切れない関係を継続する経営をしています。購入者と縁の切れない関係とは、顧客に責任の持てる仕事をするということです。
③②から派生することですが、顧客が自分の住宅に誇りをもち、高い帰属意識を抱えていれば、その住宅をいつも清掃し、維持管理し、外部から見て美しく、家の中に通された人がうらやましく思うような環境を維持します。このような住宅は、居住者に高い満足を与えるとともに、地域社会でも話題になり、評判になります。
これらを見てみると、先のページで取り上げた工務店の仕事の内容そのものではないでしょうか。日本の経済スタイルは実は最先端と言われることがありますが、こういうことを言いたいのだなと思いました。多くの日本人が、表面的いnとらえている日本の産業のスタイルは、テレビでCMをしている大企業のスタイルですが、そうした中で生き残っている中小企業のスタイル、今は時代に取り残されているように見えるスタイルが、時代の新たな変化とともに、実は最先端になっているのかもしれません。あるいは、もともと最先端だったとも考えられますが。