工務店の社長の仕事

多くの工務店は、お客様からの多様な要請に応えながら、建主に喜ばれる住まいづくりのために全力を尽くしています。使われる建材に、何年間して不具合が出れば、取り換えるのはもちろん、なるべく問題にならない材料を選ぶこともしています。良い材料があると聞けばすぐにでも飛んでいきます。日本国内はもとより、可能であれば外国までいきます。工務店の社長ともなればゴルフ三昧というのはとんでもない話しで、良い工務店の社長は現場まわりや情報収集などで、席が温まる時間もありません。

その上に、工務店の社長はトップセールスマンであることが求められます。受注が増えて社員も増えれば、今度はその規模に見合うだけの仕事を確保しなければなりません。いままでお付き合いのあるお客様のところをこまめにまわったり、趣味と実益を兼ねてグループや地域のネットワークに参加したり、ボランティア精神も発揮して町内の世話役を仰せつかったりなど、地域における人脈を広げ、顔を広くして受注の機会を拡大するのも大切な仕事です。

工務店の社長といっても多彩で、得意不得手がありながらも、それぞれのカラーを持っています。それが、お客様である消費者には見えにくいということは非常に残念で、また悩みのタネにもなっています。

地域の工務店が支持される理由

家づくりにおいて工務店が選ばれる最大の理由は、大手では難しいとされる機能への期待です。大組織の優位性を超えた小組織の有利性と言えば、きめ細やかな対応ということになります。小回りが利く、細かな注文に応じてくれる、直接仕事をやってくれる人たちの顔が見える、職人さんがいる、営業マンと違い、打ち合わせてくれる社長の説明力などです。大手に比べれば、広告宣伝費などの営業経費、つまり間接費をかけないのも特徴です。さらに、特定の産地の木材を使いたい、無垢材を化粧で、などのこだわりや細かな注文は大手では対応が難しくなります。そして、手がけた住宅を長年にわたって保全するという「家守り」機能への期待も大きいです。これは、近所だから、頼みやすいから、といった理由とセットですが、これに仕事が誠実で安心できるとなれば大幅な信頼を受けることになります。地域の住まい手は、そんな身近な工務店を探しています。

最近では、地域版の住宅情報誌が工務店を取り上げるようになり、また、展示用住宅を設けたり、工事中や竣工の物件を対象に見学を催したりする工務店も増えてきています。しかし、それも大組織と違い、企業努力の末にささやかな経費の出費にとどまっているところがすごいところです。